編集委員のことば

 

 本シリーズは,好評をいただいた「保育ライブラリ」の全面改訂に基づく新たなものです。幼稚園教育要領の改訂および保育所保育指針の改定をよい機会として,記述として足りない点や補うべき点について大幅に手を入れ,新たな版としました。
 それはまさに時宜を得たものでもあります。今ほど,保育・幼児教育を囲む制度や社会・政治の情勢が激変しつつある時期はなく,まさに確かな方向性を持った提言と指針が求められているからです。保育の重要性の認識は広がってきており,養成を通して力量のある保育者を送り出すことが必要であり,また現職の方々の研修に力を注ぐようになりました。そのためのテキストが本シリーズの目指すところです。
 何より,保育・幼児教育の公共的使命が明確になってきました。もはや保育所は子どもを預かってくれさえすればよいなどと誰も言わないでしょう。また幼稚園は子どもが楽しく過ごしていればよいので,教育は小学校から始まるとも言わなくなりました。
 そこにおいて特に大きく寄与したのは,保育士の国家資格化と保育所保育指針の告示化です。保育士・保育所の仕事についての社会的な認知が進んだことの表れです。またそれを通して,幼稚園教諭と幼稚園に対して保育士と保育園が対等に位置づけられたことも見逃せません。幼稚園教育要領は従来から大臣告示であり,幼稚園教諭免許は国による資格であり,それと同等になったのです。
 保育所保育指針において保育所の保育は養護と教育を一体的に進めるものとして定義されています。そこで言う教育とは幼稚園と同様のことであり,幼稚園教育要領と対応した記述になっています。それが告示とされ,つまりは法令として扱われることで法的な義務づけとされることとなっています。ですから,今後,幼児教育の施設は幼稚園と保育所の双方が該当することになりました。
 一方,幼稚園の学校教育全体での位置付けも強固なものとなりました。学校教育法の改正により幼稚園は学校種の最初に来るものとして重視され,その目的や目標も「義務教育及びその後の教育の基礎を培う」ものとして,人格形成の基盤を育てることがはっきりとしました。なお,この規定はさらに教育基本法第11条の「幼児期の教育」の明記により裏付けられており,そこでは幼稚園と保育所が家庭・地域と連携して進めるという趣旨が述べられています。ですから,学校教育法の幼稚園の記述は保育所にも準用されると解釈されます。
 児童福祉法も保育所保育を支える方向で改正され,さらに次世代育成支援計画の策定が地域に義務づけられる中で保育所の児童福祉に占める位置が大きなものとなりました。虐待防止のための要保護児童対策地域協議会の大事な構成員ともなっています。
 保育士の業務として子どもを保育することと共に,家庭への支援が含められたことも大きな意味があり,それが保育所保育指針での保護者視点の詳細化につながり,並行して,幼稚園教育要領でも保護者との連携や子育て支援が明確に記されました。子育て支援が幼保双方にとって大きな課題となっているのです。
 以上のことから,幼稚園教諭・保育士の仕事は広がりつつ,さらなる質の高さを求められるようになっています。従来にも増して,養成校への期待は大きく,そこで優れたテキストが必要となることは明らかです。
 本シリーズはそのニーズに応えるために企画され,改訂されています。中心となる編集委員4名(民秋,小田,杤尾,無藤)が全体の構成や個別の巻の編集に責任を持っています。なお,この間,杤尾氏は残念ながら逝去され,残された3人は,その遺志を継ぐべく努力したいと思っています。
 本シリーズの特徴は次の通りです。第一に,実践と理論を結びつけることです。実践事例を豊富に入れ込んでいます。同時に,理論的な意味づけを明確にするようにしました。第二に,養成校の授業で使いやすくすることです。授業の補助として,必要な情報を確実に盛り込み,学生にとって学びやすい材料や説明としています。第三に,上記に説明したような国の方針や施策,また社会情勢の変化に対応させ,現場の保育に生かせるよう工夫してあります。
 実際にテキストとして授業で使い,また参考書として読まれることを願っています。ご感想・ご意見を頂戴できるなら,それを次の改訂に生かしていきたいと思います。

民秋 言・小田 豊・杤尾 勲・無藤 隆